いりろぐ

ごった煮備忘録

VR機器(HMD,コントローラ)の選定

VRChatを始めて今日で1か月。なかなかログインできず未だにランクは「New User」のままだが楽しくやっている。......やっているのだが、デスクトップモードでは没入感に限界があった。

 

周りを見てみるとなでなでしたりされたり。実に表情豊かである。

VRの喜びを知りやがって!許さんぞ!俺にもさせろよ!

 

こうして私はついにVR機器を買う決心をした。

そこで、今主流となっているVR機器のスペックを調べたり、使用感を聞いてまわった結果を書き留めておこうと思う。

 

【こちらは使用レビューではなく、2020年8月現在での各製品のスペックおよび見聞きした評判をまとめたものです。ご注意ください。この記事を参考にしてVR機器を購入し、発生した損害について私は一切の責任を負いません。】

 

目次

表の解説

この記事ではVR機器のスペックを以下のような表を使って説明する。

片目解像度 1440×1600
パネル 有機EL
リフレッシュレート 72Hz
視野角 100度
IPD調整 ハードウェア調整
ラッキング方式 インサイドアウト
スタンドアロン はい
コントローラ付属 はい
重量 596g
価格

税込49800円

一つずつ見ていく。

  • 片目解像度
     ディスプレイの片目あたりの解像度。参考程度に、1080p解像度は1920×1080、1440p解像度は2560×1440である。
  • パネル
     液晶と有機ELがある。テレビなどと同じで、有機ELは黒の再現性が高く、軽く、低遅延である代わりに高額。液晶は実際の見た目の解像度が高く、省電力で、安いが重い。
  • リフレッシュレート
     「1秒間に何回表示を変えられるか」を示す。VR酔い」の原因となりうる部分。一般的なモニターは60Hzである。VRChatなら60Hz、BeatSaberなど動きの激しいゲームなら90Hzが推奨される。
  • 視野角
     普通のモニターとHMDで大きく解釈が異なる部分。HMDでは本当に「視野がどこまであるか」を示している。人間の視野は両目でおよそ120度である。
  • IPD調整
     日本語で言うと「瞳孔間距離調整」である。VR酔い」に非常に強い相関がある部分。人によって目(瞳孔)の間の距離には差があり、これを調整しなければ違和感が残る。ハードウェア調整は物理的な調整であり、ソフトウェア調整はディスプレイの表示上での調整である。
  • ラッキング方式
     「アウトサイドイン方式」「インサイドアウト方式」があり、前者は外部センサーの設置を必要とする。後者はHMD搭載のカメラを使うので、外部センサーを設置しなくてよいが、部屋が暗いとトラッキングがうまく動作しない。
  • スタンドアロン
     PCやゲーム機などからの出力を必要とせず、HMD単体での起動が可能であるもの。HMD単体ではPCVRに比べてパフォーマンスの質が劣る。
  • コントローラ付属
     VR機器はHMDだけではない。両手にコントローラーを持つことがほとんどである。この項目はそのコントローラーが付属するかを示している。
  • 重量
     個人的に重要だと思っている部分。長時間の使用においては首への負担が無視できない。参考程度に、2020年8月現在、価格.comでゲーミングヘッドセット1位の「ロジクール G933s」は379gである。
  • 価格
     重要である。メーカーによって税別表示となっているものでも、この記事では消費税10%を考慮して税込みで書いている。

Oculus Quest(オキュラス・クエスト)

f:id:Irigoma:20200808125942j:plain

片目解像度 1440×1600
パネル 有機EL
リフレッシュレート 72Hz
視野角 100度
IPD調整 ハードウェア調整
ラッキング方式 インサイドアウト
スタンドアロン はい
コントローラ付属 はい
重量 596g
価格 税込49800円

www.oculus.com

まず特筆すべきはその値段、SSD64GB版で税込49800円という驚きの価格である。一般消費者向けとしてVR機器の価格をここまで押し下げたのはすばらしい。

 

性能も問題なく日々のVR生活に堪える。インサイドアウト方式を採用したスタンドアロンHMDであるために、高額なPCを必要としない。つまり、5万円でVR生活をはじめることができてしまう。

 

しかし、搭載しているCPUはPCのものに比べて非力であるため、例えばVRChatではアバターやワールドに制約がかかる。

......と思っていたら、Oculus Link(USBケーブルによるPCとの有線接続)によってPCVRにも対応した。 「死角?特にありません、無敵です」

とはいっても、PCで生成したフレームをまとめて動画にしQuestでストリーミングしているだけなので、一瞬の判断やタイミングが重要なゲームに向いていないことは明らかである。

 

コントローラーの評判はかなり良い。軽いうえに指を3本までトラッキングしてくれる。内蔵バッテリーではなく電池式であるために、「遊ぼうと思ったらバッテリー切れで充電待たないと」ということがない。電池を入れ替えるだけで即座に遊べる。

 

Oculus Rift S(ーリフト・エス)

f:id:Irigoma:20200808133524j:plain

片目解像度 1280×1440
パネル 液晶
リフレッシュレート 80Hz
視野角 110度
IPD調整 ソフトウェア調整
ラッキング方式 インサイドアウト
スタンドアロン いいえ
コントローラ付属 はい
重量 560g
価格 税込49800円

www.oculus.com

LenovoOEM生産しているOculusのHMDで、USBとDisplayPortが一体となったケーブルでPCと有線接続するタイプのもの。前述のQuestの有線版かと思いきや、細かな違いがある。

 

まずQuestのパネルは有機ELなのに対しこちらは液晶である。ゆえに、スペック上での片目解像度はQuestに劣るが、実際の見え方ではほとんど変わらない。画面に網目模様が浮き上がる「スクリーンドア」が少なく、ディスプレイとしての性能は十分である。リフレッシュレート、視野角もそれぞれQuestより8Hzと10度大きく、VR体験の質の向上に寄与している。

 

Questと違いこちらは最初から有線接続のPCVR対応であるために、遅延がかなり少ない。スタンドアロンで使用するつもりがなく、VR音ゲーFPSをしたいならこちらを選んだほうがよい。ただし、有線の宿命としてケーブルを天井から吊り下げる、高いところから垂らす等の対策をしたくなることもあるだろう。

 

着け心地は他のHMDと比べて軽いことから悪くはないようである。
コントローラーはQuestと同じものであり、使いやすさに定評がある。

 

このように利点がたくさんあるが、Twitterを見ているとバグの報告が多いのと、IPD調整がソフトウェア上でしかできないのは注意すべき点である。

 

HTC VIVE Pro(エイチティーシー・ヴァイヴ・プロ)f:id:Irigoma:20200808142646j:plain

片目解像度 1440×1600
パネル 有機EL
リフレッシュレート 90Hz
視野角 110度
IPD調整 ハードウェア調整
ラッキング方式 アウトサイドイン
スタンドアロン いいえ
コントローラ付属 はい
重量 770g
価格 税込153500円

www.vive.com

プロの名を冠するにふさわしい圧倒的な性能。しかし価格もプロ級でHMD+コントローラーにここまで出せる人は少ない。

 

コントローラーの使いにくさは初代VIVEから変わっておらず、HMDにここまで金をかけたい人なら別途後述のindexコンを同時に買ったほうが幸せになれる。

 

HTC VIVE Pro Eye(ープロ・アイ)

f:id:Irigoma:20200808143610j:plain

片目解像度 1440×1600
パネル 有機EL
リフレッシュレート 90Hz
視野角 110度
IPD調整 ハードウェア調整
ラッキング方式 アウトサイドイン
スタンドアロン いいえ
コントローラ付属 いいえ
重量 不明
価格 税込179168円

www.vive.com

「なんぼなん?ここ」

「こちら、17万9000円になっております」

「17万?!(驚愕)うせやろ?」

「いえ、本当です」

「こんなHMDだけで17万て、ぼったくりやろ!」

「いえ、性能的にも...両目がトラッキングできる、というのがありまして...。」

(中略)

「はーつっかえ!辞めたらこの仕事?」

「モシャモシャセン」

 

どこかで聞いたことのあるような上記の会話がすべてです。
高額!消費者向けとは思えない!
以上です。配信者は買うかもしれない

 

HTC VIVE Cosmos(ーコスモス)

f:id:Irigoma:20200808175307j:plain

片目解像度 1440×1700
パネル 液晶
リフレッシュレート 90Hz
視野角 110度
IPD調整 ハードウェア調整
ラッキング方式 アウトサイドイン
スタンドアロン いいえ
コントローラ付属 はい
重量 665g
価格 税込98870円

www.vive.com

HTC VIVE Proの次に出てきた製品であるが、問題が多すぎるといわれているもの。

スペックを聞く限りは完全にVIVE Proの劣化版である。

 

以下に問題点を挙げる。

  1. モニターまでの前後距離調整ができない(VIVE,VIVE Proはできた)
  2. Cosmosに搭載されている液晶の特殊な性質により、見た目の画質は解像度のスペックよりも悪い。
  3. HMD搭載のファンのノイズがきつい。
  4. コントローラーが重い。Cosmosのコントローラーはなんと225gもある。あのiPhone 11 Pro Maxがちょうど226gであるから、両手に6.5インチスマホを持ち、さらにそれらを振り回すこととほぼ同じである。
  5. 接触センサーがない。ゆえに、ハンドサインが作れない。
  6. 電池の持ちが悪いといわれている。
  7. 専用コントローラーのトラッキングがうまくいかない。
  8. トラッカー・コントローラーの規格であるLighthouseにデフォルトで対応していない。対応させるには別途26400円のオプションパーツが必要。

このようにCosmosは従来のVR機器から考えて欠点のミックスもんじゃみたいな状態であるのに、価格は約10万円。積極的にこの製品を買う理由は見当たらない。

 

HTC VIVE Cosmos Elite(ーコスモス・エリート)

f:id:Irigoma:20200808181454j:plain

片目解像度 1440×1700
パネル 液晶
リフレッシュレート 90Hz
視野角 110度
IPD調整 ハードウェア調整
ラッキング方式 アウトサイドイン
スタンドアロン いいえ
コントローラ付属 はい
重量 665g
価格 税込114880円

www.vive.com

性能面ではかなり良い印象を受けるが、基本的にはCosmosと同じである。

 

付属コントローラーとベースステーション(外部センサー)はLighthouse1.0という旧規格のものであることに注意されたい。この影響により、初代VIVEゆずりのコントローラーの持ちにくさは激しく振り回す際、例えばBeatSaberプレイ中に顕著である。

 

HMD単体の価格は73810円であるが、これは性能面・使用感共に勝るValve indexより高く、コストパフォーマンス的魅力は感じられない。

 

Valve index(ヴァルヴ・インデックス)

f:id:Irigoma:20200808182639j:plain

片目解像度 1440×1660
パネル 液晶
リフレッシュレート 144Hz
視野角 130度
IPD調整 ハードウェア調整
ラッキング方式 アウトサイドイン
スタンドアロン いいえ
コントローラ付属 はい
重量 748g
価格 税込138380円

steamvr.jp

現在のハイエンドPCVR用HMDの主流がこちら。Oculus Rift Sを2台買ってもまだ余るという金額ながら、ハイエンドPCの性能を限界まで引き出してくれる逸品。

Oculus製品はフルトラ(頭・両手の3点だけでなく、腰・両足も加えた計6点でトラッキングすること)に正式に対応していない。よってフルトラまでやろうと考えていて、技術的課題を自分で解決する自信がなければ、この製品を買うのが一番簡単で分かりやすい。

 

この製品の特に優秀である点を挙げると、

  1. ベースステーション1.0と2.0のどちらにも対応している。
  2. コントローラーの形状が特徴的で、指を自由に使うことができる。
  3. マイクの性能が極めて良い。
  4. スピーカーは「オフイヤースピーカー」で、スピーカーが耳に接触しない。汗をかいても、長時間使用しても使用感が損なわれない。
  5. 90Hz、120Hzのリフレッシュレートに対応。144Hzは開発者向けではあるが、デバイスの性能上は出力可能である。

などである。

 

対して欠点は

  1. 眼鏡の使用が想定されていない。
  2. 鼻あての部分に隙間ができるので、没入感が損なわれる。
  3. クッションが薄く、着け心地が良いとはいえない。長時間の使用には向かない。(他社製クッションにより変更可能)
  4. 使用するグラフィックボードによっては性能に制限がかかる。
  5. コントローラーのスティックが壊れやすい。PS Vitaみてーだなお前な
  6. コントローラーはバッテリー式であるため、充電切れが発生する。

など。とはいえ、総合的に考えてかなり良い製品であるため、ハイエンドPCVRをする場合の第一選択はこの製品である。

 

ミドルハイ~ハイエンド帯のPCを既に持っていて、VR沼に肩まで浸かりたいならこの製品を選ぶ意味は十分にある。

 

Pimax Artisan(パイマックス・アーチスン)

f:id:Irigoma:20200808190344j:plain

片目解像度 1700×1440
パネル 液晶
リフレッシュレート 120Hz
視野角 170度
IPD調整 ハードウェア調整
ラッキング方式 アウトサイドイン
スタンドアロン いいえ
コントローラ付属 いいえ
重量 不明
価格 税込46000円

Pimax Artisanjp.pimax.com

同社からは5K PLUS, 5K XR, 8K Plus, 8K Xなどという視野角おばけ(200度!)も発売されているが、そもそもOculus, HTC, Valve製品に比べてユーザーが極端に少ないため省略する。こちらはそれらモンスター級VRHMDの廉価版である。

 

廉価版とは言っても視野角は170度もあり、こちらに関しては不足を感じることはまずないといってよい。しかし、コントローラーが付属しないため、別途indexコンやVIVEコンを買うことになるのだが、そうすると価格の魅力は薄れてしまう。

 

広い視野が欲しいという人向けの製品であるが、参考までに、私のフレンドは「初めて触ったHMDの視野角で満足してしまう」と言っていたので、変態向け製品なのかもしれない。

 

結局のところ...

で、結局お前は何を買いたいんやという話だが、私が買う予定のVR機器はほぼOculus Rift Sで確定している。理由は単純、お金がない+スタンドアロン起動に興味がないからである。

フルトラも視野にいれており、技術的課題があることも承知の上である。

それを解決する過程も楽しむ、それくらいが私にとってはちょうどよい。

 

またVR機器購入の際には使用感のレビューも書こうと思う。